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No books, No life

最近読んだ本のレビューをしています

No.27「大統領の疑惑 米大統領選を揺るがせたメディア界一大スキャンダルの真実」

「大統領の疑惑 米大統領選を揺るがせたメディア界一大スキャンダルの真実」(米題はTRHUTH The Press, the President, and the Privilege of Power)を読みました。著者はメアリーメイプス、訳者は稲垣みどり、です。(敬称略)

 

  • あらすじ

この本はアメリカのCBSニュースのジャーナリストである、メアリーメイプスが行った2004年3月のブッシュ大統領テキサス州兵時代の入隊までの経緯、入隊後の活動、に関する調査報道の真否、報道後のメアリーメイプス、及びこの報道を行ったCBSニュースのチームの処遇について書かれています。

 

2003年から始まったイラク戦争中の大統領はブッシュです。彼は1972年〜1974年までにテキサス州の軍事パイロットであったことから、自分には国民のために戦う者の気持ちがわかると主張していたそう。

 

しかし、彼はテキサス州兵に親のコネ(金と政治力)を使って入った上、健康診断を受けなかったため、パイロットとして飛行し、テキサス周辺の警備に当たるなどの任務をこなすことは所属していた最初の数ヶ月ほどであったことがCBSのメアリーメイプスが属する調査報道チームの調べによって分かりました。1970年代当時はベトナム戦争の最中であったため、多くの若者が徴兵に伴うベトナムでの銃撃戦を避ける手段を探していました。その手段は州兵になることでした。しかし州兵は数十人と限られており、多くの応募者は州兵になることができませんでした。一方、政治力と金を持った若者はコネを使って州兵になりました。その内の一人がブッシュです。

 

この報道が緻密な調査によって明らかになった事実であることをメアリーメイプスは主張していますが、証拠である当時のテキサス州軍の幹部であったキリアンの文書はコピーされたものであったため、文書の内容が100パーセント本当であると言い切ることはできません。一方、調査報道において常に本物の文書が手に入ることは珍しいそうです。

 

メアリーメイプスと彼女のチームはブッシュの州兵入隊までの経緯、入隊後の仕事ぶりに関する報道を行った後、保守系のブログメディアからこのキリアンのメモの書体がその時代よりも後のものであることを理由に事実無根の報道であると非難を受けます。新聞社やテレビ局、雑誌もライバル会社の評判を落とし、自社の利益を拡大するためにこれに便乗しました。またホワイトハウスもこれーブッシュ大統領の評判を危険にさらす報道ーを事実に基づいた報道でないとし、公式の記録において1972年〜1974年の間にブッシュ大統領はテキサスでの勤務を行ったと主張しました。メアリーメイプスの調査では最初の数ヶ月軍務を行った後は父の選挙活動の支援などを行っていたとされています。

 

報道を主体的に進めていたメアリーメイプスは社会からはもちろん、職場内からも白い目で見られるようになりました。バイアコムCBSの役員、自分の企画を受け入れ、番組で流すことを決定した上司でさえ、この報道の正当性に目を向けず、社会からの批判を抑えるために企画者である彼女に責任を追及しました。

 

社内調査委員会(メアリーメイプスに責任があると考えていう役員が任命した)の判断の結果、調査は誤報であったとされ、2004年に彼女は解雇されます。

 

  • 感想

この話にとても感動しました。どこに感動したかというと

  1. 国民の知る権利のために事実を追求する
  2. 仲間、支えてくれる人への感謝する

を行っている点です。「事実」を報道するという強い使命感を持ち、自らの危険を顧みず国民の生活を左右する権限を持つ大統領について調査を行ったことは尊敬に値すべきことだと思いました。根も葉もない批判やジャーナリズムの幾度となく行われる検閲を通過していない、個人のブログ記事に似たものやライバル会社のを潰そうと「疑う」ことを忘れ、ブロガーの記事を拡散する他の大手新聞社やテレビ局、雑誌、社内からの批判を受けてもなお、「真実を報道する」という信念を曲げず、自らの辛い過去と向き合い、この本を執筆したその魂に感動しました。また同じチームで働き、情報提供者へのインタビューを行った、レポーターであるダン・ラザーとの友情は心を打つものでした。40年間、CBSに勤めた彼もこの報道のストーリー、証拠の信憑性を信じており、メアリーメイブスが社会的に批判された時にも、社内から総スカンを食らった時にも、ジャーナリストとしての誇りを守ろうとする彼女を励まし続けました。そんな彼との共闘関係と彼への感謝が本書内のいたるところにあります。苦しい状況でも互いを気遣い、奮い立たせる関係性に仲間の大切さに再確認しました。

 

私企業として公共性が失われつつジャーナリズム、いつでも平等とは限らない社会、自己保身のために裏切る上司、完璧を求めつつも常に完璧でいられない葛藤、信念のために走り続ける勇気、人との出会いの大切さ、を感じさせてくれる一冊です。ジャーナリストを目指す方はもちろんですが、一人でも多くの方にオススメしたい本です。信念と仲間を守る彼女の生き方に衝撃を受けるから。

  

 

※英語版のリンクですみません。日本語版は書店で購入できます。