No.8「諦める力」
諦める力 為末大 著を読みました。
この本の内容はおおきく二つに分かれています。一つは才能の違いを主張し、それを否定する社会構造について具体的な事例を交えながら語っていくパート、もう一つは才能の違いを認め、いかにして自分の幸せを追求していくかについて語っているパートの二つです。
まず一つ目の話の展開について。基本的には為末さんが陸上選手として歩んできた経験を元に語られます。そこでの才能の違いを認めた経験とは、高校生の時に100メートルの選手であった為末さんが400メートルハードルの選手になったことです。中学生の頃は無敵だった為末さんの100メートルのタイムは、他のライバルたちにどんどんと詰められていることに気がつきました。体格も中学時代からほとんど変わっておらず、成長速度も鈍化していることから将来の成長に期待が持てないことがわかりました。この状況から、「自分の一番になれる場所」という観点で勝負の場を変えて400メートルのハードルに挑戦したわけです。
しかし、ここでは100メートルを諦めます。(路線変更する)この行為が日本では悪だとされているのです。なぜなら努力すれば最後は報われるという風潮があるからです。だから諦めは逃げであり、目標を達成できないのは自分の努力が足りないからだと主張されます。ですが為末さんは世界の超一流のプレイヤーたちと競う中で100メートルでは世界一にはなれないことを悟ったのです。そこには努力では埋めることができない才能の差がありました。
二つ目の話に移ります。才能の差を認めた為末さんは自分が陸上をしている目的は何かを考えました。それは「勝負をすること」でした。だから自分の勝てる分野を探し、400メートルのハードルに取り組み、世界で3位になるなど勝ちも経験しました。ここで重要なのは為末さんが自分の幸福の価値観を見つけたことではないでしょうか。もしここで周囲の期待に応えなきゃと思っていたり、努力が足りないから続けていれば勝てるという思いを持っていたら、練習はきつい上に自分の勝ちたいという欲求を満たせずつらい思いをするだけです。
自分にとっての幸せって何だろう、と疑問に思っていたらおすすめの一冊です。