No. 26「すべての組織は変えられる 好調な企業はなぜ「ヒト」に投資するのか」
すべての組織は変えられる 好調な企業はなぜ「ヒト」に投資するのか 麻野耕司著を読みました。
リンクアンドモチベーションで組織改革コンサルタントを務める著者が「すべての組織は病んでいる」と題し、会社の中で最も重要な組織について論じています。
現代の組織の課題はリーダー、マネージャーにマネジメント能力がないことだそう。新卒の離職率が高いこと、うつ病、自殺などが他国と比べて多いこともその証拠の一つとしてあげられます。
- 前提
商品のヒットサイクルの短期化によって、ヒット商品を生み出すヒトが重宝されています。そのようなヒトを雇用できるか、または育てられるか、が企業の成功のカギを握っているのです。一方、アメリカの労働市場を模倣し、成果主義による人事評価が当たり前になったこと、ヘッドハンターや人材紹介会社が転職エージェントサービスを始め、転職インフラが整ったことにより、転職が容易になりました。異なる価値観を持つ個人が給与だけでなく、仕事のやりがいや職場の雰囲気、企業理念などを考慮し、自己実現のために働くことができるようになったのです。
このような時勢の中でリーダーはメンバーをマネジメントしていかなければなりません。言われたことを一生懸命にやっていれば成功するわけではなく、他の人の意見を聞きながらも自分で考えて答えを出し、問題を解決していかなければならないのです。
その中でメンバーから上司に求められているコミュニケーションの質について以下の5
つの点を気をつけることが推奨されています。
①仲間のウォントを把握する
②犯人探しをしない
③同僚の陰口、悪口は禁止、あるなら直接言う
④仕事を振る時は、意義を伝える
⓹問題を受け入れ、一緒に解決していく姿勢を示す。
他にも具体的な事例をあげながら現場で起こっている問題についても考察しています。マネジメントする立場になったら一度、読んでみても後悔しないはず。
No.25 「沖縄文化論」
沖縄文化論 岡本太郎著を読みました。
この本は1996年に出版された本です。少し古めです。しかし毎日出版文化賞を受賞しており、2世代ほどのジェネレーションギャップがある僕でもとても面白いと感じました。
- なぜこの本を手に取ったのか
書き出しの話につたれたからです。父の事業がうまくいかなくなり、母親と離婚した家庭の息子が自ら父親に殺してほしいと請い、父親が息子を手にかけるという話をどうとらえるのか?という書き出しでした。
私はもちろん、酷いとは思いつつ、息子の献身に切ない美しさを感じました。本書上でも息子の献身の美しさを指摘していたので、共感度が高く、どんな本なのか興味が湧きました。
- 実際読んでみて
この本の目的は沖縄の文化を見直し、日本の文化を捉え直す、ことです。沖縄の文化としては、御嶽、古くから伝わる琉球舞踊などが取り上げられています。これらの文化的な営みはすべて生活と密接に関わっています。古くから本州側の役人に税金を納める立場であった沖縄の人たちは台風などの自然災害によって、自分達の生活を害されることがありました。大切に育てていた農作物も台風の暴風雨によってダメになることがあったわけです。これをなんとか防ごうと、御嶽でお祈りを始めたり、豊作を祝い、来年の豊作を願う、琉球舞踊が行われるようになったのです。
対して日本文化として私たちが想像するものは京都の金閣寺や銀閣寺、奈良の大仏といったものが大半ではないでしょうか。本書ではこれらを日本の文化ではないと切り捨てています。その理由は日本人の生活に根ざしていないからです。これらは中国から伝えられた仏教の影響で作られたに過ぎず、日本人が生活に必要であるから作ったものではない、という点で生活に根ざしたものではない、との記述されていました。
日本では地震や火山の噴火などの自然災害で家が壊れたり、食料を捕球できなくなることがありました。そこで自分ではどうしようもできない事態に直面することで世の中に対する無常観が培われてきました。この日本人の根底にある価値観は「生活に向き合ったから」こそ生まれたものであり、今も沖縄の人たちに親しまれている沖縄文化は私たちの忘れかけている姿勢を呼び起こしてくれるものです。文化と対峙する面白さを知ることができました。
NO.24「深く早く考える」
深く早く考える 「本質」を瞬時に見抜く思考の技術 稲垣公夫
を読みました。
この本は深速思考という思考法についての本です。NECアメリカの副社長を務め、トヨタ研究に造詣が深い、筆者がエンジニア能力を高める研修を行っていたものだそう。
深速思考は二つのステップに分けることができます。
一つは原因をマップに整理すること。あることがらが起こった時、その原因をマップにして整理することで
①何が根本的な原因になっているのか、
②原因の中で関係性のあるものは何なのか、
について一目でわかるようになります。
二つ目に課題を解決することです。この本では問題の構造の似た課題に対する課題解決の方法をできるだけ、その業界と関係性なさそうな業界から見つけてきて、それを適用することを勧めています。
なぜ駅のホームの階段は下りの方が広い場合が多いのか、もしもわからなかったら、この本を開いてみてください。
No,23「企業内人材育成入門」
企業内人材育成入門 中原 淳 著 を読みました。
目次
- インストラクショナルデザイン
- 実践的共同体
- まとめ
- おすすめ度
投資に対してどれだけの資本を回収できたか、を示す指標であるROIが重要視される現代において企業における人材育成の重要性が叫ばれています。その理由は人件費が費用の中で最も大きい割合を占めるからでしょう。人の生産性を高めることはROIを高めることに大きく貢献します。
ではどうすればROIの高い、つまりハイパフォーマンスの人材を育てることができるのでしょうか。ここでは理論と成功法の取得という観点で企業側が提供できるものについて考えてみようと思います。
インストラクショナルデザインとは端的に言えば学習装置のデザインです。最近開発されたもので言えば、インターネット上のアクティブラーニングのようなものを指します。携帯で使うアプリなどがそうです。
このようなアプリには学習者のモチベーションを高める工夫があります。例えば、ゲーム感覚で問題がモンスターに見立てられていたり、正解するとメイド服を着た女の子が褒めてくれる、というような仕掛けです。
このケースでは知識は外部からの情報を吸収することで得られます。
- 実践的共同体
実践的共同体とは社員が働く仕事場のことです。社員が積極的に職場の中で意見交換をすることが前提となっているという点で職場とは少しニュアンスが違います。私たちは人に教えられることでその知識を習得したり、人に教えながら自分のやり方を体系化します。人に教えることが自分の能力を一番高める、ということは実感されたことがあると思います。社内で行うブレストもこの典型的なパターンです。
このケースでは知識とは外部とコミュニケーションの中から生み出されるものです。
- まとめ
大きく分けてこの2パターンから知識は生み出されるそうです。インストラクショナルデザインで得られる知識は理論が多く、すぐにOJTで使えるものではないかもません。しかし、フレームワークを知っていれば業務を効率化することができます。この点で理論を学習することも重要な研修です。
一方、実践的共同体によって生み出される知識はOJTで生み出されており、現場ですぐに役立つ知識でありますが、いつも有効な結果が得られるとは限りません。学習者が知識を総動員してトライ&エラーと周囲とのディスカッションの中から自分なりの成功法を見つけ出していかなければなりません。
- おすすめ度 ★☆☆
人材関連のお仕事をされている方には★★☆です。人材育成、特にその環境づくり、モチベーション作りについて体系的に書かれています。一方、具体的な方法論はあまり書かれていません。企業によって変わるので方法論を書くことは難しいかもしれませんが。。。教育、人材に興味のない方は読んでも飽きてしまうと思います。
No.22「理科系の作文技術」
理科系の作文技術、木下是雄著を読みました。
物理学者である著者が簡潔にわかりやすく伝えるための文章の書き方を記した本です。
内容としては日本語の構造、意見と事実の違いについて論じています。
日本語の構造
日本語の特徴として、主語と述部が離れやすいという特徴があります。
例えば、
私は今パソコンで記事を書いています。
では私はが主語、記事を書いています、が述部です。
一方、英語は
I am writing an article with my laptop.
となり、主語である、I、述部である、wtiting an articleは日本語に比べて近くにあります。
そのため、誰が何をしたのかが、という文の根幹をつかむまでに時間がかかります。
事実と意見の違い
意見と事実を見分けることができているか確かめるために一つ質問です。
どちらが意見でどちらが事実でしょうか。
①扇風機にホコリが付いている
②扇風機は汚い
①は事実で、②は意見です。
事実とは
a:自然に起こる事象:過去に起こった、人間の関与した事件などの記述で
b:しかるべきテストや調査によって真偽を客観的に確認できるもの
P.104
とこの本では定義されています。
①の場合、扇風機のフレームを指でなぞれば確認できるでしょうが、②の場合、確認のしようがありません。
よって①は事実、②は意見であることがわかります。
おすすめ度 ★★★
大学教師が薦める100冊にも載っているです。他にもわかりやすく文章を書くために、重点先行主義、パラグラフの作り方、一文を短く書くコツなどが紹介されています。面白いので是非読んでみてください。
No 21「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」
スタンフォードのストレスを力に変える教科書 ゲリーマグゴナガル著を読みました。
この本はストレスは体に悪いという思い込みを覆してくれるものです。私はプレッシャーに弱いです。しかしこの本を読んでからはプレッシャーは自分が成長しようと努力しているからこそ感じるものだと考えることができるようになりました。ストレスは体に悪いものでなく、自分の成長を助ける効果もあることに気が付いたからです。このようにポジティブにプレッシャーを捉えることができるようになったことで以前よりもプレッシャーに弱いと感じることは少なくなりました。
なぜ、この本を読んで、私のプレッシャーに対する認識は変わったのでしょうか。それはこの本が心理学における理論を用いてるからです。そのため私たちの中にあるマインドセットを変えることがどれだけ私たちの生活にいい影響を与えるかに納得することができます。
この本に書かれてることは大きく分けて三つです。一つはストレスが体の中でポジティブに作用している側面、二つ目にストレスに対して体はどのように反応するか、最後にストレスとどのように向き合えば私たちはストレスを味方につけることができるのかについてです。中でも、困難な目標に直面した時の私のストレスの感じ方について大きく影響を及ぼした例について紹介します。
その前に一つ質問があります。ストレスに対してあなたはどのようなイメージを持っていますか。ストレスは体に悪い、ストレスを溜めすぎるとうつ病になる、などネガティブなイメージを持っていませんか。一方でプロのスポーツ選手が試合の前日会見において緊張はするものの、試合をすることに対してワクワクしているとコメントしていることを聞いたことはありませんか。例えばウサインボルト選手はこのリオ・オリンピックの期間中、プレッシャーのせいか他の選手に追いかけられる夢を見ていたそうです。しかし彼は今まで世界選手権やオリンピックのような重要な大会においてシーズンベストを出し、優勝してきました。つまり、「俺はできる」という思いが彼の中にあったことが推測されます。結果、彼はシーズンベストで優勝を果たしオリンピック3連覇を達成しました。
この例から私が言いたいことは、人間にはストレスに対して打ち勝つ力が備わっているということです。科学的にもストレスには集中力やあきらめない力を生み出す体の成分を生み出す効果があることが実証されています(この本の本文参照)。人はストレスを感じた時に誰かをいたわったり、逆境をチャンスだと捉えたりすることで、困難に立ち向かう力を得ることができるのです。ストレス反応の中には、困難から逃げるものもあります。これは原始時代にはライオンなどに襲われることがあったために必要な反応でした。その名残で今も残っています。
この本ではストレスのいい面に目を向けることを勧めています。なぜなら自己肯定感や達成感を味わうことで、幸福感を感じることができるからです。もちろん人生にはあらゆる辛く苦しいことがありますが、「これを乗り越えれば成長できる」、「これができたらこの人の悩みを解決することができる」と考え、自分がしていることと社会という自分よりも大きなものとのつながりを見つけることができた時、人はそれを自分が成す意味を見つけることができ、困難に立ち向かう力が湧いてくるそうです。
あなたが今、とても難しい局面にいるなら、読んで後悔しない本です。
NO.20「ロスジェネの逆襲」
ロスジェネの逆襲 池井戸潤 を読みました。
半沢直樹の続編です。
銀行員であった半沢直樹は証券会社に出向になります。
しかし銀行に証券会社が依頼された企業買収の案件を横取りされてしまいます。そこで証券は買収のターゲットとなった会社のアドバイザーとなって買収対策をサポートとしていきます。
つまり、銀行と真っ向勝負です。
この本では多くの登場人物は5つのグループに分けられます。
一つは半沢の所属する証券会社のグループ。主なメンバーとしては
二つ目に銀行のグループ。
三つ目に敵対的買収を仕掛けられる東京スパイラル。
四つ目にフォックスというIT会社。
五つ目に敵対的買収を仕掛ける電脳。
金を目的にしているのか、はたまた世のため人のためになるサービスを提供しようと思って会社を経営しているのか、それとも社員を守っていくために経営をしているのか、出世のためなのか、社会の不公平さを正すためなのか、人それぞれ働く目的は違います。あわよくば結果を出しても目的を達成しても嫉妬や妬み嫉みとも戦わなければなりません。
物語の終盤で半沢が残した一言が心に残りました。
「戦え、森山」「そして俺も戦う。誰かがそうやって戦っている以上、世の中は捨てたもんじゃない。そう信じることが大切なんじゃないだろうか」P.367 13〜15行
社会に対して不満を言うのではなく、その理不尽を解決するために"戦う"。自分の信念を守るために仕事をする半沢には人間としての深みを感じました。